不動産所得の意義と似たような取引の所得区分
【不動産所得の意義】
不動産所得とは、以下の資産の貸付けによる所得をいいます。
(1)不動産…土地およびその定着物
(2)不動産の上に存する権利…地上権、借地権、永小作権など
(3)船舶(総トン数が20トン以上のものに限る)
※ 総トン数が20トン未満の船舶等の貸付けは、事業所得または雑所得に該当します。
(4)航空機
【不動産所得と事業所得・雑所得】
◆不動産貸付業
⇒事業的規模か否かにかかわらず、不動産所得
◆不動産の売買及びその仲介、不動産のあっせん業
⇒ 事業所得または雑所得
◆不動産所得の起因となる賃貸用マンションなどの建物に設置した太陽光発電システムによる売電収入
⇒ 不動産所得
なお、自宅の屋根に設置した太陽光発電システムによる売電収入は、一般的には雑所得に該当します。
◆有料駐車場、駐輪場の貸付け
⇒ 駐車場、自転車置場等の使用料については、事業者の責任において他人の物を保管する場合には、事業所得または雑所得に該当します。
⇒ いわゆる月極駐車場のように、土地だけを提供して、自動車などの管理は借主に任せる場合には、不動産所得に該当します。
◆下宿等、時間極め駐車場など、不動産の貸付けにサービスの提供が付随するもの
⇒ 事業所得または雑所得
食事の提供や、管理人をおいて保管責任を負うなどサービスの提供が伴う場合が該当します。
◆従業員宿舎の使用料
⇒ 事業所得
事業主が従業員に寄宿舎などを提供している場合の使用料は、一般的に福利厚生に該当するため事業付随収入と考えられます。
◆広告看板、ネオンサインなどの掲示収入など
⇒ 不動産所得
土地、建物の屋上や側面、塀などに取り付けられる広告看板やネオンサインを掲示することにより受ける収入が該当します。
ただし、店舗内の広告掲示収入は、事業付随収入として、事業所得に該当することとされています。
◆海水浴場などにおけるバンガローなど、簡易施設の貸付け
⇒ 事業所得または雑所得
観光地、景勝地、海水浴場等におけるバンガロー等で季節の終了とともに解体、移設又は格納することができるような簡易な施設の貸付けに
よる所得は、事業所得又は雑所得に該当することとされています。
◆ケース貸し、ボックス貸し
⇒ 不動産所得
商業施設の売り場・フロアの一部の貸付けと同様に捉え、不動産所得とされています。
ただし、パーティションなどで区切られてた区間など様態によって、借地借家法の適用の有無など他の法律関係は異なりますので、注意が必
要です。
◆不動産業者の販売目的不動産の一時的に貸付け
⇒ 事業所得
不動産売買業等の事業付随収入と考えられ、事業所得に該当します。この場合において、貸し付けた不動産が建物などの減価償却資産に該当
するときは、その貸付期間に応じて減価償却費に相当する金額を事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することができます。
また、金融業を営む事業者が、担保権の実行又は代物弁済等により取得した土地、建物、機械又は車両等の資産を一時的に貸し付けたことに
よる収入も同様の取扱いとされています。
【不動産所得と譲渡所得】
◆借地権等の設定に伴う権利金
⇒ 原則、不動産所得
以下の2つの要件を満たすものは、譲渡所得に該当します。
①建物または構築物の所有を目的とする地上権または賃借権等の設定
②権利金の額が、土地の時価の50%を超えること
◆更新料、名義書換料
⇒ 原則、不動産所得
一般的な、居住用物件の賃貸にかかる更新料、名義書換料のほか、借地権などの契約期間満了に伴ってその存続期間の延長の対価として受ける
更新料や、借地人の名義が変わることについて貸主に支払われる名義書換料も該当します。
ただし、借地権の更新などにおいて、契約の重要な部分について変更を加えるものなど、実質的に新たな借地権の設定の対価に該当する場合に
おいて、その借地権などの設定の対象となる土地の時価の50%を超えるときは、譲渡所得に該当します。
まとめ
不動産の貸付けや借地権等の権利金の設定
①不動産の貸付けのみが提供される場合(居住用物件の賃貸、月極駐車場など) ⇒ 不動産所得
②不動産の貸付けに伴って人的サービスも提供される場合(寄宿舎、一時預かり駐車場) ⇒ 事業所得または雑所得
➂権利金の設定の対価が、 時価の50%を超える場合 (実質的に譲渡とみなされる場合) ⇒ 譲渡所得
最終更新日:2021年10月29日