生活に関する税講座

税理士は、偉そうで堅いイメージ、事業もしていないし一生お世話になることはないとお思いの方々にもっと身近な存在として感じて頂きたいと思っています。

税金は、生活していくうえで切っても切り離せない存在です。

どのような時にどのような税金を支払うことになるのか?自分でできる節税策って実際どのようなことなのだろうか?多く税金を支払ってしまっていないだろうか?

このような疑問を解消するため、主にご家庭のお財布を預かる主婦の方々を対象に、勉強会を開催いたします。

少し知識を身に付けるだけで、様々なことに変化が生まれてくるのではないでしょうか。

参考ページ

⇒ 不動産の取得に関して支払う税金に関する説明については、こちらから

⇒ 日々の暮らしのなかで支払う税金に関する説明については、こちらから

 

【日常の疑問にいくつかお答えいたします】

フリマアプリで売ったお金に、税金はかかるのでしょうか。

基本的には、税金はかからないと考えていいでしょう。

生活用動産と呼ばれる家具、家電、書籍、衣服、自家用車など日常生活で使用するようなものを売った場合には、所得税は課税されないこととなっています。

一方で、貴金属、宝石、書画、骨とうなどで、1個または1組の価額が30万円を超えるものを売った場合については、課税対象となります。したがって、30万円を超えるような高級ブランド鞄や時計などについては、課税対象となります。

こういったものの譲渡によって生ずる所得については、50万円の特別控除が設けられていますので、年間の譲渡益が50万円を超えない限り、課税されることはありません。

ただし、いわゆる転売ヤーと呼ばれる方のように、反復かつ継続的に取引を行っている場合には、営利目的とみられ、事業所得または雑所得と判断される可能性があります。

この場合には、売ったものが生活用動産であるかどうかは関係なく、事業所得に該当し青色申告をしない限りは控除額がないため、1円の譲渡益から全ての取引が課税の対象となります。

年間10万円もなかなか医療費を支払わないのですが。(医療費控除)

医療費控除は、原則として年間支払った医療費が10万円を超えた場合、その超えた金額をその年の所得金額から控除できる制度です。なお、控除の対象となるのは、ご自身とご自身と生計を一にする配偶者やその他の親族の方にかかる医療費で、ご自身が支払ったものです。

ただし、たまたま事業がうまくいかない年や、パートで働いている主婦の方、年金で生活されている方など、年間の所得金額(収入から給与所得控除額などを控除した金額)が、200万円未満の所得が少ない方は、その所得金額の5%を超える部分が、医療費控除の対象額となります。

例)所得金額が、150万円の場合
  150万円×5%=75,000円 ⇒ 年間の医療費が75,000円を超えた部分が医療費控除の対象となります。

また、現在は、セルフメディケーション税制という医療費控除の特例があります。

これは、特定一般用医薬品等(セルフメディケーション税制対象のマークのついた医薬品等でレシートに印が付されているもの)を購入した場合で、その年に健康診断や予防接種などを受けているときは、上記の医療費控除と選択で受けられる制度です。対象となる医薬品等の購入額の合計額が、12,000円を超えた場合、その超えた金額(88,000円が限度)をその年の所得金額から控除額することができます。

iDeCoって、始めた方がいいのでしょうか。

iDeCoとは、個人型確定拠出年金のことを言います。

個人型確定拠出年金とは、個人が自分で決めた掛金を拠出(個人型確定拠出)して、運用し、運用の成果を将来の年金として受け取る制度です。

確定拠出年金とは、掛金(拠出)金額が確定していて、年金額が変動するものをいい、将来の年金額の確定していて、拠出金額が変動する制度として確定給付年金制度というものがあります。

iDeCoは、ご自身で運用することとなりますので、もちろん運用損が生ずるリスクがございます。

iDeCoは、加入する個人の職業によって、拠出限度額が異なります。
1 自営業者等 68,000円/月
2 厚生年金保険の被保険者のうち確定拠出型の年金を実施している場合 12,000/月
3 厚生年金保険の被保険者のうち企業型年金のみを実施している場合 20,000円/月
4 厚生年金保険の被保険者のうち2、3以外の方 23,000円/月
5 公務員、私学共済制度の加入者 12,000円/月
6 専業主婦(夫)等 23,000円/月

上記の毎月の拠出金額は、全額所得控除の対象となり、年間の所得から控除することができます。
iDeCoの拠出金額には、各証券会社などに支払う口座管理料が含まれているため、支払金額全額が掛金の金額にはなりません。この口座管理料は、金融機関ごとに異なりますので、事前に確認をした方がよいでしょう。

また、運用時の運用益については、現在は課税対象外となっており、税制上優遇措置が受けられます。

なお、運用の成果を将来受け取れるのは、原則60歳になった時です。年金受給をするか、一時金で受け取るかは、規約によりご自身で選択することができます。したがって、60歳まで受給や解約ができない点は、注意が必要です。

受給の仕方によって、課税方法が異なりますが、年金受給であれば、公的年金等控除額が、一時金として受給すれば退職所得控除の対象となり、税制面ではかなり優遇されています。

ここまでのことを踏まえますと、所得税の課税される税率が高い方は、始められるとよいのではないでしょうか。
元本割れしない商品で運用し、所得控除を受けるだけでも価値があると思います。いわば、超長期の定期預金に積み立てるだけで、積立金額の何割かの税金が安くなる節税効果が得られます。

拠出時に所得控除が受けられる上に、受給時も各控除の対象に含まれますので、2重で控除が受けられる点は、税制上かなり優遇された制度になっています。

積極的に運用されるかどうかは個人の判断になりますが、多少資金に余裕があり、老後まで取り崩せない貯蓄をしても構わないという方は、始められるとよいと思います。

 

給与から引かれているものって、どのようなものがあるのでしょうか。

ここでは、一般的なサラリーマンの方が受け取る毎月の給与明細において、控除されている税金や保険料についてご説明いたします。

①健康保険料

健康保険料は、昇給などの事実がない場合を除いて、毎年4月、5月、6月に支払いを受けた給与等の金額を元に、標準報酬月額の等級が決定され、その等級に定められた月額に応じて保険料が算定されます。

保険料の金額は、等級ごとに定められた標準報酬月額のおおよそ10%ですが、5%ずつを会社と従業員で折半して負担しますので、給与から控除されているのは、標準報酬月額のおおよそ5%の金額です。

また、賞与の支給の場合には、賞与額に保険料率を掛けて計算されます。

※ 保険料率は、都道府県ごと、また、健康保険組合ごとに異なります。

健康保険は、病気、ケガ、出産、死亡などの事由が生じた場合に、一定の給付を行い、生活を安定させることを目的とした保険制度です。

普段病院にかかったときには、被保険者証を提示することにより、3割の自己負担で診療を受けているでしょう。また、出産や死亡の際には、一時金などの保険給付があります。

国民健康保険との一番大きな違いは、病気などで一定期間就業できない場合に、傷病手当金が給付されることです。

また、会社勤めを続けている場合には、原則として75歳まで加入することとなります。

②介護保険料

介護保険料は、40歳になると65歳までの間、給与から控除されるようになります。65歳以上になると年金支給額から控除されます。
保険料の金額は、①健康保険料と同じ等級ごとに定められた標準報酬月額のおおよそ1.8%で、0.9%ずつを会社と従業員で折半して負担しています。

介護保険は、介護施設や在宅での介護サービスが必要となった際に、一定の給付をおこなう保険制度です。

40歳になると自動的に資格を取得することとなりますので、65歳になる前でも、万が一ガンなどの特定の疾病で介護が必要になった場合には、給付を受けることが可能です。

➂厚生年金保険料

厚生年金保険料は、実際には、国民年金保険料と厚生年金保険料の2つの保険料の負担です。

保険料の金額は、①健康保険料と同じ等級ごとに定められた標準報酬月額の18.3%とされています。厚生年金保険料も会社と従業員で折半して負担をしますので、標準報酬月額の9.15%が給与から控除されます。

よく毎年年金保険料の負担が増えていると言われることがありますが、現状では平成29年以降18.3%で保険料率は固定されていますので、昇給に伴う標準報酬月額の等級が上がっているだけで、負担割合は変わっていません。

厚生年金保険は、老齢・障害または死亡の際に、年金給付をおこなう保険制度です。老後や障害を持つことになった場合の生活を安定させることを目的としています。

現在では、原則として65歳から年金の受給が開始されますが、70歳未満の方は加入の対象となります。

④雇用保険料

雇用保険料は、失業手当や教育訓練給付金、育児休業給付金など、労働者の方にとって有益な給付金の原資となる保険料です。

保険料の金額は、業種により異なりますが、一般的な業種の従業員の負担は、給与等の総支給額の0.3%となっています。

雇用保険は、労働者を雇用する事業では、原則として強制的に適用される保険制度で、労働者の生活および雇用の安定と就職の促進のために、失業された方や教育訓練を受けられる方などに対して失業等給付をおこなっています。また、失業の予防等を図るための事業をおこなっています。

⑤源泉所得税

給与や賞与については、その支払いの都度、所得税が源泉徴収されます。

これは、会社が、給与の支払いの都度、所得税を徴収して、国に納めなければならないことになっているからです。この毎月の給与などから控除される所得税は、1年間に納めるべき税金の前払いの性格をもっています。

サラリーマンの方であれば、その年最後の給与等が支給される際に、それまで源泉徴収された所得税とその年において支払うべき年税額との過不足を精算する年末調整が行われます。

毎月控除される源泉徴収税額は、支給金額から社会保険料を控除した金額に応じて課される所得税を考慮して定められていますので、年末調整の際に生命保険料や地震保険料の控除証明書を提出して所得から控除する金額が増えることによって、所得税が戻ってくる方が多くいらっしゃいます。

⑥住民税

サラリーマンの方の住民税は、原則として会社が毎月の給与から控除をして、市区町村へ納めることとなっています。 これは、特別徴収制度とよばれ、住民税の徴収漏れを防ぐためにこの方法が採られています。

会社は、毎年1月末までに従業員の住所地の市区町村に「給与支払報告書」という前年の給与所得に関する報告書を提出します。
市区町村は、この情報に基づいて算定した住民税の金額を「特別徴収税額決定通知書」と呼ばれる書類を会社に送付することによって、徴収すべき住民税額を通知しています。

会社は、その年6月から翌年の5月まで毎月の給与から通知書に記載された税額を徴収して、市区町村に納付しています。

サラリーマンの方にとっては、ご自分で金融機関に行って納付をする代わりに会社が納付をしてくれるありがたい制度だと思います。