不動産所得の収入計上時期

【不動産所得の金額の計算】

不動産所得は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。なお、青色申告をしている場合には、そこから青色申告特別控除額を差し引くことができます。

不動産所得=総収入金額-必要経費-(青色申告特別控除額)

 

 

【不動産所得の収入計上時期】

不動産所得を計算するうえで重要なポイントの一つは、総収入金額に含める収入の計上時期です。

不動産所得の総収入金額には、地代家賃、共益費、礼金、更新料、名義書換料など不動産の貸付けによる収入金額が含まれます。

所得税では、その年の確定申告において、総収入金額に計上すべき金額は、『その年において収入すべき金額』と定められており、不動産所得においては、原則として、契約で定められた支払日が収入すべき日(支払日基準)とされています。

たとえば、翌月分の家賃を当月末日までに受け取る契約の場合、翌年1月分の家賃であっても、12月末に収入計上することになります。これは、入金があった場合はもちろんですが、未入金であっても収入計上する必要があります。この場合、その年の収入計上することとなる家賃は、当年2月分から翌年1月分の家賃となります。

したがって、原則的には、前受家賃の概念はありません(一定期間分を一括して支払う契約でない場合で、一定期間分をまとめて入金された場合を除きます)。

少し経理になれている方は、期間対応(前受未収)の考え方で翌年1月分の家賃は、翌年分の収入として前受家賃で処理する方が違和感がないと思いますが、その点において大きく異なりますので、注意が必要です。

また、毎年契約で定められた期日に、1年分の家賃を一括して受け取る契約の場合には、その契約で定められた期日が収入計上時期になりますので、その期日に1年分の家賃を収入計上することとなります。

補足情報

契約により不動産を3年以上の期間にわたって他人に使用させることにより、その貸付けの対価として一括して支払いを受けた賃貸料については、臨時所得に該当します。
臨時所得に該当する場合において、その賃貸料がその年分の総収入金額の20%以上であるときは、平均課税を適用することができます。

 

一方で、期間対応基準で(前受未収)経理することも認められています

期間対応基準によって経理する場合には、帳簿書類を備えて継続的に記帳している場合で、以下の要件に該当する必要があります。

①事業的規模の場合

 A 前受収益および未収収益の処理で帳簿に記帳していること
 B 1年を超える期間の賃貸料は、その前受収益および未収収益についての明細書を確定申告書に添付していること

②事業的規模以外の場合

 1年以内の賃貸料については、上記①のAの要件を満たすこと
 ※ 1年を超える期間の賃貸料については、期間対応基準を採用することはできません。

 

たとえば、7月1日に、契約に基づいて2年分の地代300万円を受け取った場合には、

①事業的規模であれば、300万円×6月÷24月=75万円、が収入金額となりますが、

②事業的規模以外の場合には、原則通り300万円が今年の収入金額に該当することとなります。

なお、②のケースでは、翌年分以降の貸付期間に係る通常経費(固定資産税など)を見積額により計上することが認められています。

 

したがって、事業的規模以外の方が、期間対応基準で経理処理する場合には、注意が必要です。

 

  

【礼金、権利金、更新料等の取り扱い】

礼金、権利金などは、不動産の引き渡し時、または、契約の効力発生日において収入計上することになります。これは、どちらで計上しても構いません。

更新料等については、契約の効力発生日(契約更新日)に収入に計上することになります。

 

 

【敷金、保証金等の取り扱い】

不動産を賃貸する場合に受け取る敷金や保証金は、一般的に退去時に借主に返還しますので、預り金に該当し、その年分の収入金額には含まれません。

ただし、敷金のうち、契約において返還しないことが決まっている部分(いわゆる敷金償却部分)については、契約時など返還しないことが確定したタイミングで、収入金額に計上する必要があります。

また、最近多いケースで、退去時クリーニング費用として契約時に預かる金額についても、一部でも返還すると明記されている場合を除き、引渡し時に収入金額に計上することとなります。

このような敷金などは、返還の不要が確定した都度、その確定した部分の金額を収入金額に計上する必要があります。

たとえば、敷金については退去時に30%を償却して、残額を返還する契約の場合には、契約時にその敷金の金額の30%を収入金額に計上し、残りの70%を預かり敷金などとして計上することになります。

 

収入計上時期のまとめ

〇原則(前受・未収経理をしていない場合)

支払日の定めがあるもの 支払日基準(契約による支払日に計上)
支払日の定めがないもの 現金基準(支払いを受けた日に計上)

 

〇前受・未収経理をしている場合

事業的規模の場合 期間対応基準(その年に対応するものを計上)
事業的規模以外 1年以内の期間 期間対応基準 (その年に対応するものを計上)
1年超の期間 支払日基準 (契約による支払日に計上)

最終更新日:2021年12月2日