電子帳簿保存法の改正に伴う電子取引の取り扱いについて②

電子帳簿保存法の改正に伴う電子取引の取り扱いについて①では、2022年1月1日以降に求められる電子取引の取り扱いに対する対応について、まとめました。

今回は、改正後の電子取引の取り扱いについて、国税庁が公表している電子帳簿保存法一問一答(国税庁HP https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_03.pdf)を参考に、留意すべき事項についてまとめました。

 

【電子取引を行った場合のケース別の保存方法】

①請求書等のPDFなどが添付されたメールを受け取った場合

 A  請求書等が添付されたメールそのものをサーバー等のあらかじめ決めた保存場所に保存する
 B  請求書等に添付されたPDFなどの添付ファイルをサーバー等に保存する

②本文に取引情報が記載されているメールを受け取った場合

 メールそのものをサーバー等に保存する

➂発行者のウェブサイトで領収書等をダウンロードする場合(例えば、ネットショッピングなどのサイトから領収書をダウンロードする場合)

 ⑴ PDF等をダウンロードできる場合
  A そのウェブサイトに領収書等を保存する
  B ウェブサイトから領収書等をダウンロードして、サーバー等に保存する

 ⑵ HTMLデータで表示される場合
  A そのウェブサイト上に領収書を保存する
  B ウェブサイト上に表示される領収書をスクリーンショットして、サーバー等に保存する
  C ウェブサイト上に表示されたHTMLデータを領収書の形式に変換(PDF化など)して、サーバー等に保存する

④第三者等が管理するクラウドサービスを利用し領収書等を授受する場合

 A そのクラウドサービスに領収書等を保存する
 B クラウドサービスから領収書等をダウンロードして、サーバー等に保存する

⑤従業員がスマートフォン等のアプリを利用して、経費を立て替えた場合

 原則として、従業員のスマートフォン等に表示される領収書データなどを電子メールにより送信させて、会社のサーバー等に保存する。
 この場合には、スクリーンショットによる領収書の画像データでも認められます。

これらのデータを保存するサーバー等は、可視性および真実性の要件を満たす必要があります。

『電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問27参照』

 

【FAXの取り扱い】

FAXを使用して取引に関する情報をやり取りする場合については、書面を送信し、受信したデータを書面で出力して確認、保存することを前提としていることから、書面による取引があったものとして取り扱うこととなります。
したがって、これまでと変わらず、紙面により保存すればよいことになります。

ただし、現在は一般的な複合機などのFAX機能やインターネットFAXを用いて、電磁的記録により送受信し、その電磁的記録を保存する場合については、電子取引に該当することとなり、電子取引データ(PDFなど)として保存することが必要となります。

『電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問4、電子帳簿保存法取扱通達7-8参照』

 

 【従業員の立替経費の精算】

従業員の方が、会社の経費を立替払いをして、支払先から電子データにより領収書を受領するような取引についても、会社の費用として計上されることから、会社と支払先との電子取引に該当します。

そのため、このような電子取引の取引情報に係る電子取引データについては、従業員から集約して、会社として取りまとめて保存、管理することが望ましいとされています。
したがって、従業員からPDFなどの電子取引データを転送してもらい、サーバー等に保存することが必要です。

なお、一定の間は、従業員のパソコンやスマートフォン等に保存しておきつつ、会社としても日付、金額、取引先の検索条件に紐づく形でその保存状況を管理しておくことも認められることとされています。

この場合においても、真実性の要件などを満たす必要があり、税務調査の際には、その従業員の方が保存する電子取引データについて、税務職員の求めに応じて提出する等の対応ができるように整えておき、電子データを検索して表示するときは、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができるように管理しておく必要があります。

税務調査の際に対象となる電子データについて検索要件を満たすような方法が取られておらず、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができないような場合には、会社として、その電子取引データを適正に保存していたものとは認められない点に注意が必要です。

『電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問8参照』

 

【すべて紙で保存した場合の青色申告の取り消しなどについて】

2022年1月1日以後に行う電子取引の取引情報については、出力した書面等による保存をもって、電子取引データの保存に代えることができなくなります(紙保存の廃止)。

したがって、災害等による事情がなく、電子取引データが保存要件に従って保存されていない場合は、青色申告の承認の取消対象となり得ます

青色申告の承認の取消しについては、違反の程度等を総合勘案の上、青色申告の承認の取消しについての事務運営指針に基づき、真に青色申告書を提出するにふさわしくないと認められるかどうか等を検討した上で、その適用を判断することが示されています。

また、電子取引データを要件に従って保存していない場合や出力した書面等を保存している場合については、その電子取引データや書面等は、「国税関係書類以外の書類(取引関係書類などの税法上の申告内容を確認するための書類)」とみなされません。

ただし、その申告内容の適正性については、税務調査において、納税者からの追加的な説明や資料提出、取引先の情報等を総合勘案して確認することが明記されています。

『電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問42参照』

 

電子取引データについても、これまでの帳簿等の保存期間と同様に、7年間(繰越欠損金にかかる事業年度については、10年間)保存することが必要となりますので、データ破損や誤って削除してしまうなど万が一に備えてバックアップを取っておくとよいでしょう。

電子取引に該当する場合の請求書等は、今後紙面での保存は不要になりますが、消費税における帳簿等の保存については引き続き紙面での保存が認められることもあり、一斉に紙面保存を取りやめるのではなく、当面はこれまでと同様の紙面での保存に加えて、電子取引データの原本ファイルついても保存をしなくてはならなくなったと捉え、徐々に紙面保存を廃止していくような運用をしていくとよいかもしれません。

なお、改正後も2021年12月31日以前の電子取引については、改正前の保存要件を満たした保存をしていない場合には、保存期間のあいだ、紙面等での保存が必要となります。